毎日の食卓に並ぶ大切な食べ物が、私たちの気付かないところで大量に廃棄されている現実をご存知でしょうか。農林水産省によると、私たち日本人は毎日1人あたりおにぎり1個分の食べ物を捨てていることがわかっています。
このような現状を打破しようと、全国各地でさまざまなフードロス対策が行われています。茨木市でも、フードロスを減らすための革新的な取り組みが次々と始まっています。
この記事では、茨木市が実施しているフードロスへの取り組みと、すぐに実践できるご家庭での対策をご紹介します。地域ぐるみの活動を知ることで、買い物や食事の準備といったあなたの日常生活も、きっと新しい意味を持ち始めることでしょう。
深刻化する日本のフードロス問題
消費者庁の発表によると、2022年度には472万トンもの食品が、まだ食べられる状態であるにもかかわらず廃棄されています。この量は世界の食料援助量の約2倍に相当し、日本の米の年間生産量にも匹敵する膨大な量です。
家庭からのフードロス量は236万トンにものぼり、その経済的・社会的損失は膨大なものとなっています。
フードロスは、今や社会全体で取り組むべき差し迫った課題となっています。実際に食卓を囲む私たちはもちろんのこと、小売店舗や製造企業といった食品関連企業全体が取り組むべき課題なのです。
消費者庁|令和4(2022)年度食品ロス量推計値の公表について
食べ残しが最も多い廃棄理由
日本の食品ロスの実態を詳しくみていくと、最も多い廃棄理由は「食べ残し」で全体の57%を占めています。続いて食材の傷みが23%、期限切れによる廃棄が11%と続きます。
特に注目すべきなのは、私たち一人当たり毎日おにぎり1個分(約103g)相当の食品を捨てているという衝撃的な事実です。この量を年間で換算すると、一人あたり37.6kgもの食品を廃棄している計算になります。
食べ残しが問題となっているのは、決してご家庭だけではありません。外食産業での食べ残しも深刻な問題となっており、特に宴会時の食べ残しは14.2%以上にものぼるとされています。
※出典:政府広報オンライン|今日からできる!家庭でできる食品ロス削減
小美玉市|食品ロス!宴会「30・10運動」NO飲み・食べ残し!
「食品ロスの削減の推進に関する法律」が制定
このような深刻な状況を受け、2019年10月1日に「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行されました。この法律は、地方公共団体と連携して、消費者や事業者への教育・学習の振興と知識の普及啓発を行うことを目的に定められています。
注目すべきは消費者と事業者、行政の三者による協働を重視している点です。「食品ロス削減月間の設定」や「フードバンク活動の支援」など、三者がそれぞれの立場で取り組むべき課題を明確にし、継続的な改善を促す仕組みを構築しています。
フードロスが発生する背景
フードロスは、私たちの日常生活におけるさまざまな習慣によって生み出されています。その背景には、現代社会特有の消費行動や生活様式が深く関係しています。
フードロスが発生する主な原因と影響、具体的な予防策を表にまとめました。
発生要因 |
具体的な影響 |
予防のポイント |
期待される効果 |
---|---|---|---|
まとめ買い |
期限切れによる廃棄 |
必要な量の把握と計画的な購入 |
食品廃棄量の削減と家計の節約 |
重複購入 |
冷蔵庫での腐敗 |
在庫確認の習慣化 |
鮮度維持と廃棄ロスの低減 |
間違った保存方法 |
食品の早期劣化 |
適切な保存方法の学習 |
食材の長期保存が可能に |
冷蔵庫の詰め込みすぎ |
食材の把握困難 |
定期的な整理と7割収納 |
効率的な在庫管理の実現 |
季節商品の大量仕入れ |
売れ残りによる廃棄 |
需要予測に基づく仕入れ |
ビジネスロスの最小化 |
調味料の使い忘れ |
期限切れ後の廃棄 |
定位置管理の徹底 |
調理効率の向上 |
このように、少しの工夫でフードロスは減らせます。フードロスの削減には、家計の負担や企業のコストを軽減する効果もあります。
茨木市のフードロス削減への取り組み
茨木市では、企業と連携したり地域住民に啓発活動を行ったりすることで、独自のフードロス削減施策を成功させています。
特に注目すべきなのは、最新技術と地域コミュニティの力を組み合わせた革新的なアプローチです。茨木市の取り組みは全国の自治体からも注目を集めており、モデルケースとして評価されています。
ここからは、茨木市のフードロス削減への取り組みを具体的にみていきましょう。
フードシェアリングサービス「Kuradashi」
「Kuradashi」は、まだ食べられるものの、通常の流通ルートでの販売が難しい商品を提供するショッピングサイトです。茨木市とKuradashiは協定を締結しており、賞味期限が迫った商品や規格外品を市内で有効活用する取り組みを実施しています。
さらに、食品ロスの削減に関する理解を深めるイベントの実施や、「Kuradashi」の市民・市内事業者に向けた普及啓発活動も実施。売上の一部は、子ども食堂や食料支援団体などに寄付されるので、フードロス対策をしながら社会貢献にも参加できる一石二鳥の取り組みとして成果を挙げています。
Kuradashiの取り組み事例は、こちらからご覧ください。
冷凍食品の無人販売店「ecoeat+」
「ecoeat+」は、茨木市双葉町にある冷凍食品の無人販売所です。この施設では、廃棄予定の食品を無償で引き取り、徹底した品質チェックを経て安全性が確認された商品のみを格安で提供しています。
特徴的なのは、完全無人で24時間営業を実現している点です。消費者はスマートフォンアプリを通じて商品を購入し、いつでも商品を受け取れます。このように人件費を抑えながら、効率的な食品の再流通を実現しています。
ecoeat+の取り組み事例は、こちらからご覧ください。
子どもたちに向けたイベント「with Glico もったいない広場」
「もったいない広場」は、江崎グリコ株式会社と茨木市の協働で実施されたイベントです。次世代を担う子どもたちへの啓発活動として、10月の食品ロス削減月間に合わせて開催されました。
イベントでは、楽しみながら食品ロスについて学ぶことが可能です。食品ロスクイズや食材を無駄なく使い切るレシピの紹介、さらには実際の調理体験まで、幅広いプログラムが用意されました。
子どもたちが自然に「もったいない」精神を育める、教育的価値の高い取り組みとして高く評価されています。
with Glico もったいない広場の取り組み事例は、こちらからご覧ください。
日常生活でできるフードロス対策
フードロス対策と聞くと難しいことのように思われるかもしれませんが、実は誰でも簡単に行うことができます。日々の暮らしのなかで少し意識を変えるだけで、フードロスを減らすことができるのです。
日常生活でできるフードロス対策としては、以下の3つが挙げられます。
- 買い物時の心がけ
- 冷蔵庫の整理
- 調理時の工夫
ここでは、各対策法のポイントを紹介します。それぞれのご家庭の生活リズムや習慣に合わせて、無理なく続けられる方法をみつけてみてください。
買い物時の心がけ
買い物へ行くときは、冷蔵庫内の在庫をよく確認して、必要な分だけを購入する心がけが大切です。スマートフォンで冷蔵庫内を撮影しておくだけでも、買いすぎを防げるでしょう。
また、手前に置いてある商品を優先的に購入すれば、賞味期限が近い商品から順に購入することになるので、小売店の廃棄を減らす効果が期待できます。
空腹時の買い物は、買いすぎにつながりやすいため注意が必要です。必要のないものを買わないように、食後に買い物へ行くことをおすすめします。
冷蔵庫の整理
冷蔵庫を整理することも、フードロス対策には効果的です。
収納率は7割程度を目安にして、透明な保存容器を活用して食材を見える化しておきましょう。冷蔵庫の中身を把握しやすくなれば、食材の使い忘れを防げます。
また、冷蔵庫内の温度をふまえた収納も重要です。野菜室やチルドルームの特性を活かして、食材に合った方法で保存することが長持ちにつながります。
定期的に冷蔵庫の掃除と整理をすることもおすすめです。掃除をするついでに食材の状態を把握することで、食品を使用する順番や買い出しの判断に役立てられます。
調理時の工夫
調理の際は、その日の体調や予定をふまえた適量調理を心がけて、作りすぎを防ぎましょう。
特に推奨したいのが、「計量」をする習慣をつけることです。レシピ通りの分量で調理すれば、作りすぎや調理の失敗による廃棄を防げます。
野菜の茎や皮も、工夫次第で立派な食材になります。茎や皮を活用したレシピを増やせば、食材を無駄なく使い切れるでしょう。
さらに、保存食の消費期限管理と、古いものから消費して食べた分を買い足す「ローリングストック法」を組み合わせることも有効です。この2つを意識すれば、非常時の備えとフードロス削減を両立させられます。
まとめ
茨木市では、地域全体で食品ロス問題に取り組んでいます。「いつも通っている店舗や施設でどのような対策が行われているのか」を意識しながら生活してみると、茨木市の新しい魅力発見につながるかもしれません。
フードロス削減は、私たち一人ひとりの小さな行動から始まります。毎日の買い物や調理のときにちょっとした工夫をするだけで大きな変化を生み出せるので、ぜひあなたもできることから始めてみてくださいね。
フードロス対策を通じた地域・社会貢献に興味を抱いている方は、ぜひ茨木西ロータリークラブにご参加ください。茨木西ロータリークラブでは、毎週水曜日の18時30分から例会を開催しており、地域や社会へ貢献するヒントを得ています。
ロータリークラブへの入会をご検討中の方であれば、どなたでもお試しでご参加いただけます。
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