下呂市のロータリークラブが取り組んだ「減塩プロジェクト」は、地域住民の健康寿命を延ばすための革新的な試みとして注目を集めています。下呂市は、高血圧や脳血管疾患という重大な健康問題を抱える地域です。この課題を解決するため、クラブは行政や民間団体と手を組み、住民一丸となった取り組みを展開しました。
その結果、健康指標の改善や地域の評価を大きく向上させる成果を上げています。本記事では、このプロジェクトの背景、取り組み内容、成果、そして今後の展望について詳しくご紹介します。
背景
下呂市が抱える健康課題は深刻です。高血圧と脳血管疾患の受診率は岐阜県内でも上位に位置し、医療費の増加や住民の健康リスクを高める要因となっていました。特に飛騨地域では、1日あたりの平均食塩摂取量が全国平均を大幅に上回る12.7gに達しており、幼少期からの塩分摂取量の多さが将来の健康に悪影響を及ぼす懸念が指摘されています。保育園や幼稚園の調査では、3歳児と5歳児の8割以上が基準値を超える塩分を摂取していることが判明しました。
このような状況に危機感を抱いたロータリークラブは、住民の健康寿命を延ばし、医療費を削減することを目指し、減塩を切り口とした地域活性化に取り組むことを決意しました。プロジェクトのリーダーシップを担ったのは、地域医療や健康づくりに関する知識とネットワークを持つクラブ会員たちです。
取り組み内容
プロジェクトの鍵となったのは、官民連携による包括的なアプローチです。下呂市減塩推進委員会を設立し、行政、商工会、医師会、栄養士会、JAなど14団体が一体となって活動を進めました。毎月14日から20日を「下呂市減塩週間」と定め、啓発活動を集中的に展開しました。
教育と啓発活動も重要な柱です。小学生を対象に減塩ポスターデザインコンクールを開催し、学校での減塩授業を通じて子どもたちに塩分摂取のリスクを伝えました。また、健診会場では減塩食品の試食提供を行い、家庭での減塩実践を促進しました。保育園や幼稚園では尿中ナトリウム量測定を実施し、保護者と連携して子どもたちの食生活改善を図りました。
さらに、地域全体での取り組みを強化するため、小売店や飲食店を対象に減塩食品や減塩メニューの普及を進めました。協力店の認定制度を設け、現在では販売店14店舗、飲食店12店舗が活動に参加しています。家庭向けには塩分測定器の無料配布を実施し、住民が自らの食生活を見直すきっかけを提供しました。
成果
これらの取り組みは、具体的な成果を生み出しました。国保特定健診の結果、Ⅰ度高血圧(※)者の割合が減少し、減塩食品の取扱数も増加しました。平成30年には16製品だった減塩食品の取扱数が、翌年には51製品にまで拡大しました。
(※)Ⅰ度高血圧に該当するのは、高血圧のリスクがある方です。レベルとしては3段階中の1であり、軽症高血圧とも呼ばれています。(引用)
また、下呂市の取り組みは地域外からも高い評価を受け、厚生労働省・スポーツ庁主催の「健康寿命をのばそうアワード」で最優秀賞を受賞しました。令和5年には岐阜県健康づくり表彰でも優秀賞を受賞し、その成果が広く認められています。これらの実績は、地域住民の意識改革と行動変容が着実に進んでいることを示しています。
今後の展望
プロジェクトの継続と発展が求められる中、下呂市はさらなる減塩環境の整備を目指しています。スマートミール認証の推進や、減塩教育の強化を通じて、健康寿命のさらなる延伸を図ります。また、地域住民との連携を深めるため、減塩普及イベントを継続的に開催し、新たな参加者を増やしていく予定です。
目指す成果は、単なる健康指標の改善にとどまらず、地域医療の持続可能性確保や、住民全体の生活の質向上にも寄与するものです。下呂市の取り組みは、他地域への活動モデルとしての展開も期待されています。
まとめ
下呂市の減塩プロジェクトは、地域社会全体の健康づくりにおけるロータリークラブの役割を象徴する事例です。民間と行政が連携し、地域特有の課題に対して効果的な解決策を提供したこの活動は、他の地域社会にとっても大きなインスピレーションとなるでしょう。
次のステップとして、持続可能な活動の仕組みづくりと、他地域への展開が期待されています。地域住民の健康と幸福を支えるこのような取り組みが、全国に広がっていくことを願っています。
参考: