コラム

【寄稿】資産の守り方・増やし方~効果的なポートフォリオ構築法~

下の記事は、ウェルスパス投資顧問渡邉泰良氏に寄稿いただきました。


資産運用について調べていると「ポートフォリオ」という言葉がよく登場します。この言葉の本当の意味を理解し、効果的な資産運用の方法を身につけることが、将来の経済的安定に不可欠です。

この記事では、ポートフォリオの意味から基本的な組み方まで、実践的な知識をわかりやすく解説します。

ポートフォリオとは何か

ポートフォリオとは、端的に言えば「様々な資産の組み合わせ」です。投資において一つの対象に全資金を投入するのではなく、複数の資産に分散させることを意味します。

株式投資においては複数の銘柄に資金を配分することが一般的ですが、さらに債券や外貨などの異なる性質を持つ資産にも分散させることで、リスク管理を強化できます。国内株式だけでなく海外株式も候補に入れることで、投資の選択肢が広がります。

ポートフォリオの組み方は自由に決められますが、その構成によって運用実績も大きく変わる可能性があるため、慎重に検討する必要があります。

ポートフォリオの重要性

10個の卵をひとつの籠に盛るな

「10個の卵を一つの籠に盛るな」という投資の世界で古くから知られる格言があります。この格言が意味するのは、投資資金(卵)を一つの投資先(籠)に集中させると、何か問題が発生した際に全資産を失うリスクがあるということです。

投資先を複数に分散させることで、一部の投資が損失を出しても、他の投資でカバーできる可能性が高まります。これにより、資産全体の安定性が向上し、大きな損失を被るリスクを軽減できます。

分散投資の仕方には投資先を分ける以外にもタイミングを変えるなどの色々な方法があります。こうした組み合わせ方もポートフォリオの一部であり、予期せぬ事態にも資産を守る役割を果たします。

最適なポートフォリオの構築条件

ただ複数の金融商品を組み合わせるだけでは、理想的なポートフォリオにはなりません。最適なポートフォリオを構築するには、「この資産とあの資産を組み合わせたらどうなるか」という相互関係を理解する必要があります。

そのためには、各金融資産の種類(アセットクラス)ごとの特徴を詳しく把握することが不可欠です。特にリスクとリターンのプロファイル、つまり何による影響を受けてどんなリスクが生まれるのか、どのような種類のリターンが期待できるのかといった基本的な性質を理解しておくことが重要です。

ポートフォリオはチーム競技と同じ

チーム競技に例えるなら、各選手(資産)の特性を理解して全体の戦略を立てる監督の役割が、ポートフォリオを構築する投資家の姿勢といえるでしょう。

資産運用におけるリスクとリターン

リスクの本質的な意味

資産運用におけるリスクは単に「危険」を意味するのではなく、「価格(価値)の変動性」を表します。投資した資産が予想通りに動かない可能性、つまり不確実性の概念を指します。

例えば、ある企業の株式に投資した場合、事業が成功して株価が上昇することもあれば、失敗して下落することもあります。また、成功しても予期せぬ競合の出現により株価が急落する可能性もあります。このように様々な要因で価格が変動するため、投資結果は予測困難です。

リターンの意味と種類

リターンとは、資産運用によって得られる「利得(儲け・収益率)」を指します。投資先によって、いつ・どのくらいの利得が得られるかをある程度予測できるものもありますが、世の中の変化によって左右される不確実性も含んでいます。

アセットクラスの特徴を理解するには、単に投資額に対するリターンの大きさだけでなく、どの程度リターンの予測が可能かという視点も重要です。

リスクとリターンの関係

資産運用では「ローリスク・ローリターン」「ハイリスク・ハイリターン」という表現が一般的です。つまり、リスクとリターンは表裏一体の関係にあり、高い利益を追求すればそれに見合ったリスクも負担することになります

リスクとリターンの関係性を振り子に例えると

この関係は「振り子」の原理で考えるとわかりやすいでしょう。振り子が右(利得)に大きく振れる可能性があるなら、左(損失)にも同じ幅で振れる可能性があります。大きな利益の可能性は、同時に大きな損失の可能性も意味するのです。

主要アセットクラスとその特性

投資対象となる金融資産は、以下の4つの主要アセットクラスに分類できます:

  1. 低リスク 現金・預貯金
  2. 低〜中リスク 債券
  3. 中〜高リスク 株式
  4. 高リスク FX(外国為替)

この分類では、1から4に向かうにつれてリスクが高くなる傾向があり、それに伴いリターンも大きくなると期待できます。

現金・預貯金

現金や預貯金は、リスクが低い代わりに利得もわずかです。現金はそのまま所持するだけでは増えず、インフレ時には価値が下落します。

預貯金は銀行などの口座にお金を預けてわずかな利息を得る方法です。元本保証がありますが、銀行が経営破綻した場合、保証されるのは1,000万円までです(ペイオフ制度)。

債券

債券は国や企業などが資金調達のために発行する「借用証書」のような金融資産です。満期までに元本と利息が返済される仕組みで、発行元が倒産しない限り、満期保有すれば元金と利息が保証されます

債券には一定期間ごとに利息が支払われる利付債があり、固定利付債と変動利付債に分かれます。債券価格と金利にはシーソーのような関係があり、金利上昇時には債券価格が下落、金利低下時には上昇します。満期前に売却すると元本割れの可能性もあります。

株式

株式は企業が事業資金調達のために発行する金融資産で、購入者はその企業の株主となります。株主は値上がり益(キャピタルゲイン)と配当(インカムゲイン)という二種類の利得を得られる可能性があります。

株式は保有し続けても売買をしても利益を生み出せます

株式投資は債券より高リスクとされますが、それは価格変動の幅の違いによるものです。日本市場では債券の標準偏差が約2%なのに対し、株式は約20%と10倍のばらつきがあります。

FX(外国為替)

FXは外国為替証拠金取引を指し、一般的にハイリスクとされています。証拠金を業者に預けることで、その何倍もの取引が可能になるレバレッジ効果があるためです。

例えば、1万円の証拠金で25倍のレバレッジをかけると、わずかな為替変動でも大きな利益または損失が生じる可能性があります。

堅実な資産運用のためのポートフォリオ構築法

「人生100年時代」における長期的な資産形成には、慎重なポートフォリオ構築が不可欠です。以下のポイントを押さえることで、より堅実な資産運用が可能になります。

目先のリターンよりリスクコントロールを重視

堅実な資産運用では、短期的な利益よりもリスクのコントロールを優先すべきです。将来の展開は不確実ですが、リスクをコントロールすることはできます

ここでのリスクとは元本割れだけではなく、収益と損失の振れ幅全体を指します。自分の理解が及ぶ範囲内で資金を運用することが、長期的な成功につながります。

遠くのものは避けよ

投資では「遠くのものは避けよ」という格言もあります。自分が正しく理解できている対象に投資するのが基本なのです。アセットクラス別のリスク・リターンの特徴を考慮し、合理的な考え方で分散投資をしましょう。

長期的視点での投資先選択

投資先の選定には、長期的な成長性を重視することが重要です。一時的な流行ではなく、将来にわたって安定した利益を生み出す事業を行っている企業を選ぶことで、長期投資の成功確率が高まります。

社会にとって必要性の高い事業、特に日々の生活に欠かせない製品やサービスを提供する企業は、長期的な成長が期待できます。今後も社会の需要に応える事業を継続し、持続的な成長を遂げていく企業を見極めることが、投資成功の鍵となります。

値動きが異なる資産の組み合わせ

堅実なポートフォリオ構築には、値動きのパターンが異なる金融資産を組み合わせることが重要です。同じような値動きをする投資先ばかりだと、相場の変動で一気に資産が減少するリスクがあります。

値動きの異なる投資先を選ぶことで、一部の資産価値が下落しても、他の資産がその損失を補う可能性が生まれます。ただし、業種が同一の場合や関連が深い場合には同じような株価の動きを示すことが多いので注意が必要です。

業種の関連性に注意

例えば、アイスクリームが主力のメーカーとエアコンが主力のメーカーは別の業種ですが、どちらも「夏に売れる製品」が主力である点は同じです。猛暑日が続くような年ならばどちらも業績アップが期待できますが、冷夏の年はどちらも業績が下がる可能性があります。

投資スタイルの選択:積極型か安定型か

ポートフォリオ構築では、自分の運用目標とリスク許容度に合わせたスタイルを選択することが重要です:

投資スタイル 特徴 主な構成資産
積極型 比較的大きなリスクを許容し、高めの利回りを狙う 新興国の海外株式・債券の比率が高い
安定型 資金の大幅減少リスクを抑え、安定性を重視 定期預金や国内の債券・株式の割合が大きい
バランス型 安定性と利回りのバランスを追求 国内外の様々な資産をバランス良く配分

時間的分散投資の活用

投資のタイミングも分散させることで、価格変動リスクを軽減できます。「ドルコスト平均法」と呼ばれるこの方法は、価格の変動を起こす金融商品を投資対象として、一定期間ごとに同じ金額の資金を投じる方法です。

「時間を分散する」という考え方

例えば、10万円を一度に投資するのではなく、毎月1万円ずつ10ヶ月に分けて投資することで、株価の高低にかかわらず平均的な価格で購入できるため、タイミングのリスクを軽減できます。

国内株式だけでのポートフォリオ構築

為替変動リスクを避けたい場合、日本株だけでポートフォリオを組むこともできます

国内株式の魅力

国内株式の魅力は、為替変動リスクの影響が直接的でない点にあります。海外株式に比べて値動きが穏やかで、情報収集も容易なため、企業分析がしやすいという利点があります。

国内企業なら情報収集も容易なので、今後どのような事業展開をしていくかも把握しやすいでしょう。身近な企業は生活に欠かせない役割を果たしていることも多く、その点から投資対象を探し始めることも有効です。

国内株式の選び方

国内株式だけでポートフォリオを構築する場合も、分散投資の原則は同様に重要です。自分の興味だけで選ぶと業種に偏りが生じる可能性があるため、様々な業種から選定することが望ましいでしょう。

偏りなく全ての業種のグロース株(成長性の高い株)とバリュー株(割安の株)を選んで資産を分配することがポイントです。企業価値と株価の関係も確認し、割安株を見極める目も必要です。

まとめ

ポートフォリオとは資産の組み合わせであり、投資対象を適切に分散させることでリスクを軽減し、安定したリターンを得るための戦略です。

資産を分散させて相補的な関係性を作り上げることによりリスクを分散させ、安定した利得を得られるようにすることが可能です。自分の投資目標やリスク許容度に合わせてポートフォリオのタイプを選び、長期的な視点で資産形成を行うことが重要です。

為替リスクを避けたい場合は国内株式に限定したポートフォリオも可能ですが、その場合も業種や企業規模など様々な角度から分散を図ることで、リスク管理と安定したリターンの両立を目指しましょう。


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